全国地域生活定着支援センター協議会は、矯正施設を退所した高齢・障がい者の社会復帰と再犯防止を支援し、全国のセーフティーネットの構築に邁進します。

長崎における刑事司法と福祉の多機関連携の歩みと展開

長崎における刑事司法と福祉の多機関連携の歩みと展開

法務省法務総合研究所から「平成29年版犯罪白書」が刊行されました。

その中の「長崎における刑事司法と福祉の多機関連携の歩みと展開」のコラムで、長崎定着の取り組みとして、ここ数年力を入れてきた障がい者自立支援協議会(長崎県大村市)等といった官民協働のいくつかの取り組みが掲載されましたので、ご紹介します。
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全国の様々な取り組みが、大きなうねりになっていけばと思います。

長崎県地域生活定着支援センター
伊豆丸 剛史
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<以下本文>
コラム18『長崎における刑事司法と福祉の多機関連携の歩みと展開』

刑事司法と福祉の多機関連携については、平成18年度から始められた厚生労働科学研究「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」(研究代表者 社会福祉法人南高愛隣会 田島良昭 理事長(当時))に係る事業において、南高愛隣会とその近隣の矯正施設、長崎保護観察所等で構成される合同支援会議が設置され、障害があり又はその疑いのある被収容者を福祉につなげる、いわゆる出口支援の取組が全国に先駆けて試行された。その後、南高愛隣会は、21年4月に法務省と厚生労働省が協働して特別調整を開始するのに先立ち、同年1月に「地域生活定着支援センター」を試行的に開設し、同年4月には全国で初めて社会福祉法人が運営する更生保護施設「雲仙・虹」を開設した。
 刑務所出所者等に対する、いわゆる出口支援の受入基盤の整備が進む一方で、平成21年度には、厚生労働科学研究「触法・被疑者となった高齢・障害者への支援の研究」(研究代表者 同上)が開始され、その後、同研究及び厚生労働省の社会福祉推進事業の成果などを踏まえ、26年度までの間に、検察庁における被疑者・被告人に対する社会復帰支援(いわゆる入口支援)についても、多機関連携によるモデル的取組が展開された。
 長崎における刑事司法と福祉の多機関連携によるネットワークは、このような取組の中で構築されてきた。
 長崎県地域生活定着支援センター運営推進委員会は、平成21年1月のセンター発足と同時に設置され、29年3月23日現在、37の関係機関の長を始めとした幹部が参加するなど、多機関連携のネットワークとして維持されている。伊豆丸剛史 同センター所長によると、同運営推進委員会は、年2回開催され、同センターの運営について、トップダウンで関係機関に周知して調整が行われるなど、同センターの活動を息長く支えているという。
 また、平成24年に南高愛隣会が厚生労働省の社会福祉推進事業の一環として設立した「福祉的支援協力事業所協議会」は、罪を犯した人を受け入れ、支援を提供した長崎県内の福祉事業所、更生保護施設、自立準備ホーム、ホームレス支援団体、医療機関、社会福祉協議会等で構成されるが、29年4月1日現在、同協議会に所属する福祉事業所は26法人・33施設まで拡大されている。伊豆丸所長によると、同センター開設当初は、こうした関係機関に刑務所出所者の受入れに係る協力を依頼しても、「趣旨は分かるが、我が施設で受け入けることは難しい。」と言われるなど、なかなか理解をしてもらえなかったが、相手に実際のケースに関わることを通して、「自分たちにもできそうだ。」と実感してもらい、そうした理解者を一人一人増やしてきたという。同協議会は、年2回の研修会を開催し、対象者の支援に係る情報を共有することにより、受入事業者間の負担軽減につなげるとともに、新たな受入れを促進する場としても機能している。他方、南高愛隣会 酒井龍彦 常務理事は、現在は任意団体として難しい財政状況の中で同協議会を運営しており、参加する機関はそれぞれ母体法人も違うので、いかに同協議会を発展的に育てていくかが今後の課題であると指摘する。
 このような関係機関のネットワークの構築・拡充に加え、同センターが地方公共団体の主導する福祉のネットワークにつながることで、より有効で、充実した、持続可能な福祉的支援が可能になったという。平成24年10月、長崎県大村市の自立支援協議会が「触法障害者の支援を検討する部会」(専門部会)をモデル的に設置し、同センターがオブザーバーとして参加することとなった。伊豆丸所長によると、対象者を帰住先に戻して当該地域の福祉につなげようとする場合、以前は同センターが地域の地方公共団体・関係機関を個別に回って説明し、受入れを要請してきたが、現在は、同センターが自立支援協議会の専門部会に相談することにより、その地域の情報が一元的に把握でき、地方公共団体が相談支援事業所をバックアップし、同事業所と同センターが連携することにより受入先の確保が容易になったほか、地方公共団体による各種申請に係る行政の手続も円滑に行われるなど、効果的な支援ができるようになったという。同センターが職員5人で年々増加するケースに対応し、年間約80件のケースを処理できるのも、このような地方公共団体主導の支援の枠組みがあるからだという。また、受け入れる福祉施設の側にとっては、自立支援協議会の枠組みに行政機関や福祉関係機関が入っているので、フォローアップが期待でき、安心感があるのだという。このような自立支援協議会の枠組みは、大村市から、29年4月1日現在、長崎市、諫早市、雲仙市、島原市にまで広がり、他の地方公共団体においても導入が検討されている。
 さらに、長崎県では、長崎県福祉保健総合計画(平成28年度から32年度)において、社会的配慮を必要とする人たちへ必要な支援を行う体制づくりの一つとして、罪を犯した高齢者や障害者が再犯することなく、社会で安心して暮らしていくためには、地域と福祉による支援が必要であることなどについて、福祉関係者を含め市民の理解を促している。同計画において特筆すべきことは、「福祉の支援が必要な矯正施設退所者に対する支援の充実」が盛り込まれ、同センターが支援する者のうち、刑務所等出所後1年以内の再入者数を32年度にゼロとする数値目標が掲げられたことである。伊豆丸所長は、同センターの業務運営について、県の担当者に対し、足を運んで数字だけでは見えない部分を説明することに努め、同センター運営推進委員会の委員の一人に県議会の理解が得られるよう尽力を頂いたことで、同センターの支援業務が長崎県福祉保健総合計画に盛り込まれるに至ったといい、同センターの施策が県の施策と同じ土俵に乗ったことに大変意義があると語る。
 長崎において、近年、地方公共団体を含めた連携の輪が広がったのは、南高愛隣会の存在が大きいが、この点について、伊豆丸所長は、特定の関係機関や人に頼らない、持続可能な支援体制を構築することが重要であり、そのためには、福祉的支援協力事業所協議会、自立支援協議会等の様々な受皿が県内各地で機能していることが必要であると指摘する。伊豆丸所長によれば、連携が広がるにつれて、他の福祉施設での受入れが進むなど、南高愛隣会を終の棲家としている者は数人に過ぎないという。
 ほかにも、同センターでは、弁護士と福祉の垣根をなくすための勉強会を実施したり、県内の医療・保健・福祉関係の大学に通う学生から成るサークル「長崎多職種連携・たまごの会」と連携し、将来を見据えて連携できる人材を増やす取組を行うなど、持続可能な支援のための受け皿を広げる試みをしている。
 他方、伊豆丸所長は、受皿はあっても、お互いに行き来がないと真の連携はできないとし、自分から会いに行く、一緒に動くなど、体温が伝わる動きをし、同センターが地域のシステムに積極的に参画し、動かす役割を果たすことが重要であると指摘しており、今後、いかに地域のネットワークをより実効ある持続可能なものにするか、長崎における多機関連携の新たな課題への挑戦が始まっている。

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